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太極拳への思いと将来への展望

日本陳式太極拳学会 一級指導員試験論文

2021年6月20日 早川拓志

1. はじめに

 近頃、太極拳の論文が数多く発表されているが内容としては転倒予防、認知機能改善、心理的機能改善など健康改善によるものが多い。それは、太極拳の特徴である放鬆(ファンソン)、リラックスが影響を与えていることが多いと読み取れ、放鬆(ファンソン)が身体に影響を与えることは実践している私本人も実感として表れている。しかし、ただリラックスするということであれば太極拳でなくとも出来ることである。例えば中国拳法の内家拳である形意拳、八卦掌もファンソンの概念は存在し、また拳法でなくとも導引術やヨガなどもリラックスによる健康効果が高いと多くの愛好者たちは述べている。20年近く太極拳を学んできた私だが太極拳=リラックス、または太極拳=呼吸法ではないと考えている。リラックスや呼吸法は太極拳を体得するための手段であり目的ではない。及川重道老師書、「陳家溝」第5号には、“纏絲勁こそ、太極拳の命”と記されている。太極拳は纏絲勁が核心となり太極拳を練習すること、体得するということは纏絲勁を練習し纏絲勁を体に覚えさせることである。太極拳の推手を行うときは纏絲勁によって相手と対し、聴勁によって相手の動きを知る。そして太極拳のレベルを上げるということは纏絲勁のレベルを上げ、推手の攻防で纏絲勁がどれだけ実践できるかであり、「陳式太極拳的五層功夫」にはそのための方法が記されている。今後の自分の成長のため、そして将来太極拳を学んでいく後輩たちが太極拳の真の目的から離れすぎないように現段階の私の太極拳の思いを以下に残しておきたいと思っている。

 

2. 太極拳とは何か

 A. 陳王廷の考え方

 太極拳は武術であり、その特徴は纏絲勁を用いた武術である。がなぜ太極拳を創始したといわれる中国河南省陳家溝出身陳氏第九世「陳王廷」は家伝の武術と導引吐納術、経絡学を融合させ太極拳を作り上げたのだろうか。太極拳の核心となるのは纏絲勁であるから「陳王廷」は後世の拳士たちが纏絲勁を体得するためにはどのようにしたら良いものだろうかと広く物事を視て、考え抜いた先が導引吐納術、経絡学を融合させ学習体感することにより纏絲勁への理解がスムーズに行えると考えたのではないだろうか。我々が太極拳を行うときは套路の中に導引吐納術、経絡学は含まれているので自然にこれを行っていて特に強く意識しているわけではない。しかし、太極拳(纏絲勁)を理解するうえで少し掘り下げて学習することも必要ではないかと思い、その概要を次に記してみた。

 B. 導引吐納術

 導引とは古代中国で生まれ気功の元となった健康法で摩擦やストレッチを通して停滞している気を流す方法で、道家(老子を祖とする学派)の修行法でもあったと言われている。特徴としては図1の導引図のように野生動物の形や動作を真似ることで気の流れを円滑にすることである。左上の動作は陳式太極拳の動作にある「白鶴亮翅」「金鶏独立」に取り入れられていることが解る。及川重道老師書、「陳家溝」第4号「太極拳の源流」から、陳王廷は武術の中の手、目、体の動きなどを導引と効果的に結びつけ、意識、呼吸と動作の三者を密接に結合させて「内外合一」の内功拳を形成したとある。吐納法とは呼吸のことで体内の古い気を吐き、体外の新しい気を取り入れる意味合いもある。太極拳を行うとき呼吸は自然に行うことが重要である。自然とは無意識の領域に近いと考えるがただただ一辺倒に行うものではない。ゆったりとした動作の時はゆったりとそれに合わせ、強く鋭く動作(発勁)するときは呼吸もそのようになる。それが自然である。陳王廷は体内のスムーズな気の流れと体外との気の循環を重要視し運気を滞りなく行うための手段を導引吐納術に求め、気が流れると勁が流れ、すなわち太極拳(纏絲勁)が滞りなく行えるようになると考えたのである。

 C. 経絡学

 中国河南省陳家溝出身陳氏第十六世「陳鑫」が長い年月をかけて完成させた書物、「陳氏太極拳図説」の巻首には宇宙の原理生成を説いた陰陽学の説明、陳氏太極拳の原理(纏絲勁)の説明、気と経絡の説明が記されていて、経絡の説明も詳細に記されている。このことからも陳王廷が太極拳において経絡学を重視していたことが理解できる。経絡とは東洋医学独特の考え方で図2のように気と血がめぐる通路のことであり臓腑、組織、筋肉、皮膚などをつなぎ、からだの隅々を通ってすべての機能を調節していると言われている。人体が「統一体」として機能できるのは経絡が全身を連絡しているからだといわれている。

 D. 正経十二経脈

 経絡には経脈(けいみゃく)と絡脈(らくみゃく)があり経脈は左右12対の正経十二経脈(全部で24本)と対のない奇形八脈で形成されている。経脈は手足に伝わる幹線道路で絡脈は経脈から網の目のように広がる枝道に例えられている。すなわち経絡は全身に張り巡らされて気が全身に流れるための通り道と考えられている。経絡は気が流れる道であるがその幹線道路の経脈はそれぞれ臓腑と深く関わりを持っていて、例えば図3のように正経十二経脈の中で肺に関わりのある経脈は「手太陰肺経(てたいいんはいけい)」、大腸に関わりのある経脈は「手陽明大腸経(てようめいだいちょうけい)」がある。十二経脈は字の通り陰経と陽経があり両手両足を地面につけたとき、日光があたる側を陽、かげになる側を陰としている。正経十二経脈の他の経脈や詳細は東洋医学の学術書で日本語に翻訳された書籍が多数出版されているのでそちらを参照していただきたい。

 E. 奇形八脈

 奇形八脈は直接臓腑とはつながっていないが十二経脈を組み合わせて互いを強調させる働きがある。また正経十二経脈と臓腑の気が多すぎれば蓄え、足りなければ補完するという、気の量の調節の役割もある。奇形八脈の中でも、図4のように体の中心を通っている「督脈(とくみゃく)」と「任脈(にんみゃく)」の働きは重要とされていて図5のように督脈は陽経を統括するので全身の陽の気をコントロールすることになる。任脈は陰経を統括するので全身の陰の気をコントロールすることになる。

 F. 絡脈

 経絡には経脈と絡脈があることは先にも述べたが、絡脈は経脈から分かれた細い枝で体の横方向に伸びて、網の目のようにはりめぐらされているとされる。正経十二経脈や奇形八脈のように主要な経絡ではないが、太極拳の気の循環や纏絲勁の重要な概念であると考えられるのでこれについても記しておきたい。図6に絡脈の概略を示した。絡脈の中で比較的大きなものを別絡といい、別絡には正経十二経脈から枝分かれて表裏関係の経脈へ連絡する別絡と奇形八脈の督脈、任脈からの別絡、そして脾の大絡、合わせて十五別絡(十五絡脈)があり、またその他の絡脈もある。絡脈は十五別絡からもさらに細小に枝分かれした孫絡、皮膚の表面にある浮絡(ふらく)もある。このように経絡の中の絡脈を見てみると主要の正経十二経脈、奇形八脈だけでは経絡による気の循環を論ずることはできない。細部にまで気を巡らせることにより循環も滞りなく行われるのではないかと考えられる。

 G. 太極拳における経絡学の捉え方

 前記の経絡学で述べたように経絡は縦横全身に広がり特に経脈は臓腑(内臓)と深く関わりがある。太極拳を体得するうえで経絡学を重視するということは当然のことながら太極拳に大きく関係があるからである。だがいったい「陳王廷」はこの経絡学から何を取り入れたのだろうかという疑問が出てくる。また太極拳は纏絲勁を体得することが大事であるがその伝わり方伝え方はいったいどのように行うのかという疑問もある。纏絲勁を図で表したものは多数存在するが図7を見るとほぼ丹田(下丹田)の位置から螺旋を描きながら両手足の指先まで到達している。経絡もまさに両手足まで貫通していて経絡(主に経脈)の通り道が纏絲勁の通り道といっても過言ではない。“意をもって気を導き気が流れれば勁も伝わる”である。言い換えれば臓腑から纏絲勁は発し両手足まで貫通する。臓腑も当然であるが中でつながっていて、特に小腸の部分は丹田(下丹田)と言われ精気を養うところであり、運動の観点からみると中心、軸とみることができる。太極拳は武術であるが人間の運動でもありその運動は纏絲勁で臓腑から発するが臓腑の中でも特に丹田から発するものである。このように見てくると太極拳で纏絲勁を理解するためには経絡についてもある程度理解することが必要なのではないかと考えられる。そして太極拳には基本的に三つの動作がある。第一の動きは丹田の左右の回転が両手足へ勁を伝える纏絲で上半身は肩、肘、手首、下半身は膝、足首と伝わり上下協調し全身の動きが一つになる。その経路は正経十二経脈がイメージできる。第二の動きは丹田の前後(または後ろ前)の回転である。太極拳では折畳纏絲と言われ経絡では奇形八脈の督脈と任脈がイメージできる。以前、及川老師から新架式の六封四閉の折畳纏絲をご教授いただいたことがある。その方法、ポイントは両手を体の中心を通すということである。これを実践していくと勁の滞りが次第に減ってきている感覚が体の中で実感することができたのである。これは督脈と任脈に、意によって気が滞りなく流れ始め、勁も自然と伝わり始めたと考えている。第三の動きは第一と第二の動きが混ざり合ったものである。丹田は左右にも回転するし前後にも回転する。実は第二の動きで述べた新架式の六封四閉の動きは第一と第二の動きが混ざり合った第三の動きである。太極拳の動作はこの第三の動きが多くあり、基本練習する単纏絲も第三の動きである。経絡からみると正経十二経脈も奇形八脈も刺激された動きであるとイメージできる。太極拳を練習する際、これまで述べた経絡学や運動規則をある程度イメージして練習することは必要なことではないだろうか。陳小旺老師書(翻訳:芳野英紀)の「太極拳の本質」の中に、太極拳の練習をするときはこの三種類の丹田の動きに注意を払わねばならぬが同時に注意しすぎてもいけない。微妙なバランスを維持しなければならない。体を動かすことと気の流れに半分注意し、体と心の放鬆(ファンソン)に半分注意しなければならない。とある。非常に難しい状態であるが、本質を突いた文章でもあると考えている。太極拳理論も同じで、頭でっかちの理論だけではそもそも話にはならないし、ただやみくもに套路を繰り返すだけでも成長はないのである。太極拳の練習で行き詰ることは多々あるが、そのとき理論に立ち返りまた老師の指導を仰ぐことが必要である。私もまだまだ足りない部分が多い、これからも成長していきたい。そしてこれから太極拳を体得しようと考えている後輩たちも是非、太極拳の理論も套路も推手も吸収して後世に伝えてほしいと願っている。

 H. 纏絲勁による集中

 「力は散じ、勁は集まる」とよく言うが、何もしないで鋭い勁力を集中し発することはまずできないであろう。纏絲勁はよく螺旋の動きであると表現される。螺旋とは三次曲線の一種で回転しながら回転面に垂直成分のある方向へ移動する曲線であると定義されている。イメージしやすいのは螺旋階段やバネである。先に述べた図7の纏絲の表現も螺旋をよく表している。また、螺旋の「螺」の文字はタニシやサザエのような巻貝の貝殻を意味する。楽器として使用されるほら貝の貝殻(図8)も螺旋を描き螺旋の先は円の半径が限りなく0(ゼロ)に近づいて尖っている。及川重道老師書、「陳家溝」第3号に陳式太極拳的五層功夫が記されていて、第三段階に以下のような文章がある。よく、「太極拳の上達を考えるなら、円を小さくする練習をしなければならない」といわれる。陳式太極拳の学習の歩みは、大円から中円へ、中円から小円へ、小円から無円に至ることである。ここでいう「円」とは手足の軌道をいうのではなく、内気の流れをさす。陳式太極拳最大の難問のひとつである。そもそも無円とは円なのか円では無いのか理解に苦しむところだがほら貝の螺旋の先端の最終地点を想像すると無円という言葉の意味するところも分からなくもない。無円に至るまではそもそも大円から中円、中円から小円を理解し、また体現することができなければならない。一番大事なことは日々の鍛錬であることは間違いないと思うが「意気を君とし、骨肉を臣とする」という言葉もある。「意」をどこに置いて鍛錬をするのか、と考えてみると経絡にあると言っても過言ではないと考えている。太極拳理論の中で経絡学を学習し、「正経十二経脈」「奇形八脈」そして細部にまでいきわたっている「絡脈」を体の中で意識することにより、日々の鍛錬の質がかわってくるはずであり、纏絲勁もまた一段上の質に変化してくるはずである。

3. 陳式太極拳の継承

 A. 現在に至るまで

 陳式太極拳はその創始者、陳氏第九世「陳王廷」から陳氏第十四世「陳長興」にて老架式に編成され、さらに陳氏第十七世「陳発科」にて新架式として発展してきた。現在も陳氏第十九世「陳小旺」老師はその太極拳を世界中に広め、私の師である「及川重道」老師に継承されている。陳式太極拳はおよそ400年の長い歴史の中、さまざまなことがあり、なくなりかけた時期も命がけで継承されてこられた時代もあった。このような拳法を現在日本で学ぶことができることはとても貴重であると私は感じている。日本の陳式太極拳は「及川重道」老師が「陳小旺」老師より長い年月をかけて継承され、私の先輩方々も及川老師とともにその技術を磨き続け、また私も及川老師をはじめ多くの方々から陳式太極拳の技術を教えていただくことができ、現在に至っている。陳式太極拳を学び始めた当初はとにかく伝統の套路と推手を覚えることに必死で、継承ということは考えていなかったが、私が指導員になり始めたころからどのように後輩へ伝えていくか、どうすれば太極拳を理解してもらえるのか、を強く意識するようになっていった。2009年には長野県にて日本陳式太極拳学会加盟団体「長野陳式太極拳道友会」を発足することができ、会員を集め現在もなんとか活動できる状態になってきている。


 

 B.これから

 陳式太極拳の継承は当然のことであるが中国、陳家溝にて脈々と受け継がれていくものと確信しているが、及川老師によって日本へ継承された陳式太極拳も次の世代へと伝えていかなければならない。そのためには第一に各個人が拳を磨くことに切磋琢磨すること、第二にその学び舎に人がいることだと考えている。長野陳式太極拳道友会が発足し10年ほど経過するが何とかここまで続いたのは一生懸命拳を磨こうとした方々がいたからである。ただ、会員はまだまだ少ない、会員がいなければ継承も何もない。日本陳式太極拳学会加盟団体の方々も人材育成に奔走している。我々の団体も同じだ。多くの方に太極拳に興味を持ってもらい、何とか会員数を増やしていかなければならない。現在日本で太極拳に求められていることは何かと考えてみる。太極拳は武術であり、また健康増進のための養生功でもある。現在日本で太極拳に求められていることは圧倒的に後者の健康増進効果であることはまず間違いないだろう。


 

 C. 長野陳式太極拳道友会の教室を4か所に

 現在長野陳式太極拳道友会の教室は北信の長野市で教室を開いている。長野県はその名の通り南北に長く、北信、東信、中信、南信に分けられる。北信は善光寺平、東信は佐久平、中信は松本平、南信は伊那谷、同じ県の中でも山川で分断され交通の便があっても、往来には多くの時間を要する。中南信から気軽に北信の教室に足を運ぶことはなかなかできることではない。だが、現在中信から長野市の教室(北信)まで熱心に陳式太極拳を学びに通っている会員が数名いる。彼らのためにも中信で教室を開くことはできないだろうか。また数年前、南信にお住まいの方が現在の教室(北信)まで見学に来られたことがあった。南信でもかなり南のほうで、高速道路を利用しても往復4、5時間はかかったのではないだろうか。長野県全域で陳式太極拳が求められていることは確かである。長野県に北信、東信、中信、南信4か所教室が開設できればもっと身近に陳式太極拳を学ぶことができるであろう。


 

 D. 人間には未来永劫太極拳が必要

 人間は他の動物よりも脳が発達している。文化が生まれ、産業が発達し生活が安定して暮らすことができるようになってきている。メリットもありデメリットも当然ある。二本足歩行の人間は背骨や膝に負担がかかりやすい、また四足動物に比べると安定性が悪い。そして、脳で考えすぎるため気が上昇したままのことが多い。このデメリットの改善方法には太極拳が有効に働きかけると考えられる。太極拳には姿勢の改善、体幹バランスの強化、運気による上下左右の気血循環改善など。また太極拳は武術でもある。武術とは、人と人が争わないための方法を身に着ける術(すべ)である。人間が自然と調和し、争いがなく、幸福に生活するには太極拳は必要不可欠と考えられるだろう。

 

 E. 日本中の公園で太極拳の風景が見られる

 日本の夏休みの時期に入ると、早朝から近所の公園や神社お寺などでラジオ体操が行われる。小学生の子供たちは眠い目をこすりながら集まり、ラジオから流れてくる音楽に合わせて、何の疑いもなく自然に手を上下に振りだす。習慣になっているのだ。日本全国老若男女、ほとんどすべての人がラジオ体操第一は何も考えずに通すことができる。ラジオ体操の歴史は太極拳の歴史ほど長くはないが、調べてみると戦前からあるようだ。戦前のラジオ体操は旧ラジオ体操と言われ厚生省が推奨したらしい。戦後には新ラジオ体操というものが制定されたようだが難易度が高くあまり普及せず、わずか1年で中止となってしまった。現在のラジオ体操第一ができたのは昭和26年頃で、これが現在まで広く普及し全国に定着している。現在のラジオ体操第一に至るまでは紆余曲折があったが、難易度が高くなると普及の妨げになっていたようだ。陳式太極拳を日本に広く普及させるにはやはり難易度を下げ伝えていく必要があるのではないだろうか。実際日本陳式太極拳学会一般教室の指導内容は38式→19式→10式(簡易陳式太極拳)と難易度を下げて指導を行っている。及川重道老師が創出された10式(簡易陳式太極拳)は一坪の面積があれば十分最後まで動作でき、また陳式太極拳の特徴も失われることなく、左右対称の練習にも難易度が低く初心者でも息詰まることが少ない。いつの日かどこの公園、神社、お寺でも10式(簡易陳式太極拳)がラジオ体操第一同様に日本人の習慣となる日を夢見て太極拳の普及活動を続けていきたい。

4. おわりに

 太極拳を体得したいと考える人たちの目的は人それぞれであると思うが、目的と手段を混同してはいけないと私は思っている。また、目的だけで手段を考えない状態も前には進めないだろう。例えば太極拳でいうと気を流すことだけが目的となってしまうことだ。初心者はまず運気を目的として向かって進んでいくわけであるが、そのための手段は「立身中正」「虚領頂勁」「鬆肩沈肘」「含胸塌腰」により丹田を形成させることである。纏絲勁を円滑に伝えることが目的となれば、そのための手段は一言でいうと一気貫通させることである。また太極拳を継承するため(目的)には人が集まらなければならないが(手段)人が集まることだけが目的となってしまうことは目的と手段の混同である。私が思うに、人が成長するための理想的な状態は、手段と目的の両方を常に持ち続け、そして一歩一歩進み続けることであると考えている。


 

■参考文献

「徹底図解 東洋医学のしくみ」富永靖弘、兵頭明監修 新星出版社

「陳氏太極拳圖解」 陳鑫 五洲出版社

「陳家溝 第3号 」 及川 重道 日本陳式太極拳学会

「陳家溝 第4号 」 及川 重道 日本陳式太極拳学会

「陳家溝 第5号 」 及川 重道 日本陳式太極拳学会

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